「こども性暴力防止法(日本版DBS)」を実務レベルで読み解く連載。 「支配性」に続き、今回は、残る2つのハードル、「継続性」と「閉鎖性」に焦点を当てます。 「一度でもこどもと接すれば確認が必要なのか?」「教室に窓があればセーフなのか?」 実務担当者が判断に迷う境界線を、最新のガイドラインに基づき整理していきましょう。
1. なぜ「継続性」と「閉鎖性」が要件とされるのか
児童対象性暴力には、時間をかけてこどもの警戒心を解き、心理的な結びつきを強めていく「性的グルーミング(手なずけ)」という特有のプロセスが見られます。
法が「継続性」と「閉鎖性」を確認の要件としているのは、一定期間にわたって密接な人間関係が築かれる環境や、第三者の目が届かない状況が、物理的に性暴力のリスクを高めるためです。そのような環境でこどもと接する従事者に対しては、事前に厳格な犯歴確認を行う必要があると考えられています。
2. 「継続性」の具体的判断基準
継続性は「雇用の期間」だけでなく、「業務の頻度や反復性」から総合的に判断されます。
〇 継続性「あり」と判断されるケース
- 定期的・反復的な業務: 週1回、あるいは月2回など、決まった頻度で繰り返しこどもと接する場合。(例:塾講師、スポーツクラブのコーチ)
- 相当期間にわたる業務: 毎日ではなくても、数ヶ月にわたって断続的に関わりが続く場合。
- 実習生などの集中プログラム: 教育実習や保育実習など、期間が数週間程度であっても、その間毎日密接に接する場合。 (※ただし、実習生は指導教員等の監督下にあり、常に同席して「閉鎖性」がないことが担保されている場合は、結果的に確認の対象外となります)
× 継続性「なし(対象外)」と判断されるケース
- 単発・1日限りの業務: その場限りの接触(1対1ではなく)で、後日に人間関係が継続しないもの。(例:年に1回だけ来るゲストスピーカー、単発イベントの保護者ボランティアなど)
3. 「閉鎖性」の具体的判断基準
閉鎖性は「他の職員や保護者が同席しているか」「周囲から視認できるか」という実態に基づき判断されます。
【職種・場面別】閉鎖性の判定ポイント
| 区分 | 閉鎖性「あり」の例 (犯歴確認の対象) | 閉鎖性「なし」の例 (確認不要の可能性) |
|---|---|---|
| 事務・受付 | 保護者面談中に、別室で児童の面倒を一人で見る業務がある | オープンな受付スペースでの対応が中心で、常に周囲の目がある |
| 送迎バス | 他の職員が同席せず、運転手と児童のみになる(特に最後の1人の際など) | 必ず添乗員や他の職員が同乗し、一対一になる状況が作られない |
| 清掃・警備 | 施設内を一人で巡回し、死角となる場所で児童に接触する機会がある | 児童がいない時間帯にのみ業務を行う、または常に複数名で行動する |
| 個別指導 | 完全な個室、または外から中が見えないブースでの指導 | ガラス張りの教室や、絶えず講師・生徒が行き交うオープンスペース |
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5. 「いとま特例」と閉鎖性の関係
急な欠員等で犯歴確認が完了する前に業務に就かせる「いとま特例」を適用する場合、事業者は以下の措置を講じる必要があります。
- 極力、外部から視認性の高い場所(外から中が見える教室など)で業務を行う。
- 防犯カメラが設置された場所を活用する。
- どうしても一対一になる場合は、事前に管理職等の了解を得る、または周囲の職員に説明して合意を得る。
6. 事業者が留意すべき「離職」の解釈
以下のケースは「離職」に当たらないとされ、再雇用の際の再照会を省略できる可能性があります。
- 次の雇用契約が事前に決まっている有期契約労働者。
- 一時的に任用が切れるが、再任用が予定されている公務員。
- 「意向確認書面」を交わしているボランティアや短期スタッフ。
まとめ
「継続性・閉鎖性」の判定においては、機械的な数字だけでなく、「こどもがそのスタッフを顔馴染みとして認識し、信頼関係を築く状況にあるか」という視点、そして「死角を作らない環境整備」が不可欠です。
- Q夏休みの1週間だけ開催されるキャンプの引率スタッフは?
- A
継続性「あり」となる可能性が高いです。期間は1週間ですが、その間、宿泊を伴うなどしてこどもと密接に過ごし、指導・ケアを行う実態があれば、防止の必要性が高いと判断されます。
- Q年に数回、不定期に呼ばれる単発の補助スタッフは?
- A
事業所の実態によります。完全に不定期で、こどもとの特定の人間関係が築かれないのであれば対象外です。ただし、「不定期だが毎年必ず参加し、特定のこどもを継続して担当する」実態があれば、継続性を考慮する必要があります。
- Q雇用契約は1日単位。でも毎日更新して1ヶ月働く場合は?
- A
継続性「あり」です。短期・長期といった契約の形式(日雇い等)にかかわらず、実態として反復して従事している場合は対象となります。



