こども性暴力防止法(日本版DBS)解説|既存DBとの違いと海外制度にない独自性

制度概要

「日本版DBS(こども性暴力防止法)」徹底解説連載。今回は、「既存のデータベース(DB)との違い」について解説します。 実は、日本にはすでに性犯罪歴等を確認するためのデータベースが2つ存在しています。「えっ、もうあるの? じゃあ日本版DBSは何が新しいの?」と疑問に思われるかもしれませんが、既存の仕組みには大きな「穴」がありました。その穴を塞ぎ、こどもを守る網を大きく広げたのが、今回の日本版DBSです。 現在運用されているシステムには以下の2つがあります。

  • 特定免許状失効者等データベース(教員対象)
  • 保育士特定登録取消者管理システム(保育士対象) 日本版DBSは、これらとは全く異なる次元の「包括的なシステム」として誕生します。

1. これまでの「穴」とは?

既存のDB(データベース)は、特定の「資格」と紐付いた処分歴(免許の失効・登録の取消し)を管理するものでした。そのため、以下のような限界(穴)がありました。

  • 「資格職」以外はノーチェック スクールバスの運転手、用務員、事務職員、部活動の外部指導員、学習塾の講師、スイミングスクールのコーチなど、教員免許や保育士資格を持たずにこどもと接する仕事に就く人については、確認する術が全くありませんでした。
  • 「行政処分」が前提 登録されるのは、懲戒免職などで免許を失効・取消し処分を受けた人です。事件を起こしても「依願退職」扱いで処分を逃れた場合や、そもそも免許を持っていない人が逮捕された場合は、DBに載りません。
  • 照会できる事業者が限定的 教員DBは学校(教育委員会等)、保育士DBは保育所(都道府県等)しか照会できず、例えば学習塾が元教員の講師を調べることはできませんでした。

2. 日本版DBSは「ここが違う!」

日本版DBSは、これらの穴を埋めるために、抜本的に異なる設計思想で作られています。

  • 🎯 対象は「資格」ではなく「業務」 免許の有無は関係ありません。「こどもと接する業務(支配性・継続性・閉鎖性のある業務)」に従事するすべての人(無資格のアルバイト、ボランティア、事務職員等)が対象になり得ます。
  • ⚖️ 対象情報は「前科(犯歴)」 行政処分歴ではなく、法務省が管理する「犯歴情報」を確認します。特定性犯罪(不同意わいせつ、盗撮、痴漢等)であれば、執行猶予や罰金刑であっても網にかかります。
  • 🏢 民間事業者も利用可能 国の「認定」を受けることで、学習塾やスポーツクラブ等も利用可能になります。公教育だけでなく、社会全体での監視体制が可能になります。

3. 既存DBはどうなる?(併用が必要です!)

「日本版DBSができたら、既存のDBは要らなくなるの?」――いいえ、そうではありません。カバーしている範囲が異なるため、併用が不可欠です。

  • 日本版DBS 刑事事件(前科)になったものを捕捉します。
  • 既存DB 刑事事件にならなくても、「懲戒処分(セクハラ、不適切な異性交遊など)」を受けた事案を捕捉できる場合があります。

例えば、「生徒と私的に交際して懲戒免職になったが、逮捕はされなかった」という元教員の場合、日本版DBSでは「シロ」と出ますが、教員DBでは「クロ」と出ます。採用実務では両方の確認を併せて行うことが極めて重要になります。

4. 海外制度との比較から見る日本版DBSの独自性

日本版DBSはイギリスの制度を参考にしつつ、日本の憲法の枠組みに合わせて独自の進化を遂げています。

国名対象者確認内容判断主体
日本こどもと接する業務特定性犯罪の前科事業者
イギリスこども・高齢者等あらゆる犯罪歴国(DBS局)
ドイツこどもに関わる職種性犯罪含む特定犯罪雇用者
フランスこどもに関わる職種性犯罪等の特定犯罪行政

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日本版DBSの「ここが特徴」

  • 「性犯罪」に特化: 職業選択の自由とのバランスを考慮し、最も深刻な領域に絞り込んでいます。
  • 「事業者」が最終判断: 国が一律に就業禁止とするのではなく、事業者が配置転換等を判断することで合憲性を確保。
  • 「二段階通知」: 犯歴がある場合、事業者の前に本人へ通知。自ら辞退することで、不必要なプライバシー侵害を防ぐ日本独自の配慮です。

まとめ:多層的な防御壁を築く

日本版DBSにより「無資格者」や「場所を変える加害者」への対策は劇的に強化されますが、万能ではありません。

  • [ ] 日本版DBSで「前科」をチェックする
  • [ ] 既存DB(教員・保育士採用時)で「処分歴」をチェックする
  • [ ] 面接・経歴確認で「不自然な退職理由」などを深掘りする

この多層的なチェック体制を構築することで、初めてこどもたちの安全を実効的に守ることができるのです。

Q
日本版DBSと教員DB、どちらか一方で確認すれば十分ですか?
A

いいえ、両方の確認が必要です。日本版DBSは「前科」を捕捉しますが、教員DBは事件化しなかった「懲戒処分歴」を捕捉できるため、併用することでチェックの漏れを防げます。

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