こども性暴力防止法(日本版DBS)完全ガイド|対象事業者と3つの義務を解説

制度概要

2026年(令和8年)12月25日、こども性暴力防止法(日本版DBS)が施行されます。

「性犯罪歴を確認する制度でしょう?」とニュースなどでご存じの方も多いと思いますが、実はこの法律、単なる「犯歴チェックシステム」ではありません。こどもたちを性被害から守るための「社会全体の安全管理システムの構築」とも言える、非常に大きな変革です。

今回は、そもそもこの法律が「何を目指しているのか」、「なぜ今、この制度が必要なのか」、そして事業者にとって最大の分岐点となる「自社がどの対象になるのか」について詳しく解説します。

1. こども性暴力防止法(日本版DBS)とは何か?

正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)です。長いため、一般的には「こども性暴力防止法」や、イギリスの制度にならって「日本版DBS」と呼ばれています。

この法律は、児童等(こども)への性暴力等がこどもの権利を著しく侵害し、心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えることに鑑み、こどもの心身の健全な発達に寄与することを目的としています。こどもに対して教育、保育等の役務を提供する事業を行う立場にある事業者が、こどもへの性暴力を防止するための様々な措置を講じることを義務付けています。

仕組みを一言で言えば、「こどもと接する仕事に就く人に、性犯罪歴がないことを公的に証明・確認する仕組みと同時に、初犯対策も整える」制度です。
「危ない人を入れない(入口対策)」と「入った後も加害させない(環境対策)」の両輪でこどもを守ろうというのが、この法律の全体像です。

2.なぜ今、この法律が必要なのか?

① 性犯罪の「再犯リスク」と「場所を変えての加害」

こどもに対して教育や保育を行う現場では、大人が「指導する」という支配的で優越的な立場に立ち(支配性)、日常的にこどもと接する(継続性)一方で、保護者の目が届きにくい(閉鎖性)という、性暴力が起きやすい環境面での特性が生じます。
また、加害者は場所を変えて加害を繰り返すおそれがあります。これまでの制度では、加害者が場所を変えてこどもたちに近づき続けることが容易にできてしまいました。そこで、採用過程や現職者に対して過去の性犯罪歴の確認(犯罪事実確認)を行い、特定性犯罪の前科がある者をこどもと接する業務に就かせない仕組みが必要とされました。

② 既存制度の限界(教員・保育士だけでは守れない)

これまでも「教員免許状失効者データベース」や「保育士特定登録取消者データベース」などはありましたが、これらは特定の資格職に限られたものでした。しかし、こどもたちが過ごす場所は学校や保育所だけではありません。

  • 放課後児童クラブ(学童保育)
  • 学習塾、スイミングスクール、スポーツ少年団
  • ベビーシッター
  • スクールバスの運転手

こうした民間教育・保育サービスの現場は、法的な確認の網から漏れていました。こども性暴力防止法(日本版DBS)は、こうした民間事業者も(認定を受けることで)制度の対象に含め、社会全体でこどもを守る網を広げた点に画期的な意義があります。

③ こどもの権利と「回復の困難さ」

性暴力は個人の尊厳を著しく傷つける行為であり、とりわけこどもに対する性暴力は、心身に対する重大な加害行為です。被害を受けたこどもは、信頼すべき大人から被害を受けることで他者や社会への信頼を失ったり、自分には非がないにも関わらず罪悪感や恥ずかしさを抱え込んだりするなど、心や体の成長に深刻なトラウマや影響を及ぼす可能性があります。事後対応だけでは取り返しがつかない「回復の困難さ」から、あらかじめ防ぐ社会全体での体制が不可欠なのです。

3. この法律が求める「3つの柱」

本法では、対象事業者に対して大きく分けて次の3つの取組を求めています。

こども性暴力防止法(日本版DBS)が求める「3つの柱」
1
犯罪事実確認・防止措置(スクリーニング)
採用時等にこども家庭庁を通じて性犯罪歴を確認し、該当者をこどもと接する業務に従事させない措置を講じます。
2
安全確保措置
研修、1対1にならない環境づくり、アンケート、相談窓口、疑い発生時の調査体制など、日常的な安全管理体制を作ることです。
3
情報管理の徹底
厳格な情報管理規程の作成が義務付けられ、万が一情報を漏えいさせた場合は刑事罰の対象となります。

4. 二つの「対象事業者」の違いとは?

この法律では、事業者を大きく「学校設置者等(義務対象)」と「民間教育保育等事業者(認定対象)」の2つに分けています。

比較項目 ① 学校設置者等(義務対象) ② 民間教育保育等事業者(認定対象)
主な対象 学校(幼稚園〜高校)、認可保育所、認定こども園、児童養護施設など 学習塾、スイミングスクール、スポーツクラブ、認可外保育施設など
実施の義務 法的義務あり(必須)
「やらない」という選択肢はありません
任意(選択制)
申請して「認定」を受けた場合のみ対象
不備・違反 是正命令、勧告、および
法人名等の公表・ペナルティ
認定の取り消し、および
認定取り消し事実の公表
独自のメリット 公的機関としての信頼維持・法令遵守 「認定マーク」の表示による
安心・安全のブランディング

※横にスクロールしてご覧いただけます。

5. 【チェックリスト】義務対象事業者(学校設置者等)

以下のリストに含まれる施設・事業を運営している場合、あなたは「義務対象」です。準備を急ぐ必要があります。

  • [ ] 学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校)
  • [ ] 専修学校(高等課程)
  • [ ] 幼保連携型認定こども園、その他の認定こども園
  • [ ] 保育所(認可保育所)
  • [ ] 児童養護施設、乳児院、母子生活支援施設
  • [ ] 児童館(福祉法第40条の施設)
  • [ ] 障害児入所施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設
  • [ ] 児童相談所
  • [ ] 指定障害児通所支援(児発、放デイ等)
  • [ ] 地域型保育事業(小規模保育等)
  • [ ] こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)
  • [ ] 登録一時保護委託者(法人の場合等)

6. 【チェックリスト】認定対象事業者(民間教育保育等事業者)

民間教育事業(学習塾・習い事など)

以下の5つの要件をすべて満たすものが対象になります。

民間教育事業(認定対象)の5つの要件
  • 対象: こどもに対して技芸や知識を教える事業
  • 期間: 標準的な修業期間が6か月以上(単発イベントは不可)
  • 対面: 対面による指導を行う(完全オンラインは不可)
  • 場所: 事業者が用意した場所(児童の自宅で行う家庭教師は不可)
  • 人数: 指導者の人数が3人以上

※上記5点をすべて満たしている必要があります。

よくある質問・グレーゾーンの解説

Q
個人の家庭教師や、自宅で一人でやっているピアノ教室は対象になりますか?
A

原則、対象外です。認定対象となる「民間教育事業」の要件に「指導者が3人以上」「事業者が用意する場所」というものがあります。したがって、個人事業主が一人で運営している場合は認定を受けることができません。

Q
ベビーシッターは対象になりますか?
A

個人のシッター単独では想定されていませんが、マッチングサイト運営者等が「認可外保育施設」の届出を行い、シッターを管理下に置く形式をとる場合は認定を受けることが可能です。

Q
学童保育(放課後児童クラブ)はなぜ「義務」ではなく「認定」なのですか?
A

運営主体が公設公営から保護者会運営まで非常に多岐にわたるため、一律の義務化ではなく、体制が整った事業者から認定を受ける枠組みとされました。自治体との「共同認定」スキームも用意されています。

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