こども性暴力防止法(日本版DBS)外部委託・派遣・実習生・ボランティアの実務対応

事業者の皆様へ

今回は、施設内で働く「自社の直接雇用ではないスタッフ」、および「実習生・ボランティア」の取り扱いについて解説します。

教育・保育の現場には、派遣会社から来ているスタッフや、給食・清掃・警備などを請け負う外部委託業者のスタッフ、地域ボランティア、学生など、多様な人々が存在します。「うちの社員じゃないから」「無給だから」と自己判断するのは非常に危険です。法律が定める責任の所在と、実務上の運用ルールをしっかり整理しておきましょう。

1. 大原則:「雇用形態」や「報酬」ではなく「業務の実態」で決まる

こども性暴力防止法(日本版DBS)における「対象業務従事者」の定義には、契約形態의 縛りはありません。

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正社員、パート、アルバイトといった直接雇用はもちろん、労働者派遣契約や業務委託(請負)、さらには無給のボランティアや実習生であっても、実態として「支配性」「継続性」「閉鎖性」の3要件を満たすのであれば、犯歴確認の対象となります。

法律の目的は「こどもを性暴力から守ること」であり、加害者が有給か無給か、雇用主が誰かは、こどもにとって全く関係がないからです。

2. 派遣労働者の場合:確認主体は「派遣先」

派遣スタッフを受け入れている場合、犯罪事実確認を実施する主体は、派遣元(派遣会社)ではなく、実際に指揮命令を行って業務に従事させる「派遣先(学校、塾、スポーツクラブ等の事業者)」となります。

こどもたちの安全を直接的に確保する義務(または認定事業者としての責任)を負っているのは、現場を預かる派遣先事業者だからです。したがって、派遣先事業者は自社の従業員と同様に、受け入れる派遣労働者に対しても事前に意向確認を行い、こども家庭庁へ照会申請を行う必要があります。

3. 業務委託(請負)の場合の仕組み

特定の事業運営を外部業者に委託している場合、以下のような仕組みが用意されています。

  • ① 義務対象事業者(学校・保育所など)の場合: 委託を受けて学校等で対象業務を行う事業者を「施設等運営者」と位置づけ、委託元(学校設置者等)と委託先(施設等運営者)が役割分担を定め、連携して措置を行います。
  • ② 認定対象事業者(学習塾・認可外保育など)の場合: 「共同認定」という仕組みが利用できます。委託元(民間教育保育等事業者)と委託先(事業運営者)が共同で国に認定申請を行うことで、委託先の従業員についても合法的・組織的に犯歴確認が可能になります。

4. 実務上の最重要ポイント:派遣元・委託先への「交代要求」

他社のスタッフに「特定性犯罪事実あり」という結果が出た場合、人員の交代を申し入れる必要がありますが、この時「犯歴があったから」と直接伝えてはいけません。

 性犯罪の前科情報は究極のプライバシーであり、不当に漏らすことは「情報漏示罪」などの罰則対象になります。そのため、派遣元等に対しては「法第6条に規定する児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めたため」といった、犯歴情報に限定しない直接的ではない形での伝達が求められます。

5. 実習生・ボランティアの線引きと「大学の役割」

  • 教育実習・保育実習生: 指導教員等の監督の下で、こどもと一対一にさせない(閉鎖性がない)ことが実習計画等で担保されていれば、犯罪事実確認は求められず「対象外」となります。一方、実習上こどもと一対一になることが予定されているなど3要件を満たす場合は「対象」となります。なお、申請主体は実習の受け入れ先となる施設(事業者)です。
  • ボランティア:
    • 〇 対象(継続性あり): 毎週のスポーツコーチ、週1回の読み聞かせ、定期的な学習支援など。
    • × 対象外(継続性なし): 年1回の運動会手伝い、バザーの売り子、単発の清掃など。

大学・専門学校側に求められる役割

もし実習直前に犯歴が判明すると、学生は卒業や資格取得ができなくなる重大な事態に陥ります。養成機関(大学等)は、「募集要項への明記」や「資格取得不可の可能性の事前周知」、および入学前・実習前における「特定性犯罪前科がないことの誓約書の取得」などを前倒しで行うことが強く求められます。


まとめ:今から進めるべき「契約のアップデート」

  • 契約書・仕様書の見直し: 派遣・委託契約に「日本版DBSに基づく犯罪事実確認への協力」や「法に基づく人員交代への即時対応」の条項を盛り込む。
  • 関係業者との協議: 施行を待たず、自社の方針を事前に説明し、理解を得ておく。

「社外の人材」だからこそ、事前のルール作り(契約への落とし込み)が円滑な運用のカギを握ります。

Q
派遣スタッフの犯歴確認を派遣会社で行うことは可能ですか?
A

いいえ。指揮命令権を持つ派遣先(学校や塾など)が、自社のスタッフと同様に確認申請を行う主体となります。

Q
1日だけのボランティアも犯歴確認の対象になりますか?
A

原則として対象外です。「継続性」の要件を満たさないためです。ただし、定期的・反復的に関わるボランティアは対象となります。

Q
委託先のスタッフに犯歴があった場合、委託先の会社に詳細を伝えてもいいですか?
A

厳禁です。犯歴情報は特定の人員以外に共有してはならない機微情報です。交代を求める際も、犯歴等の具体的な理由は伏せ、法律に基づく配置上の理由(おそれがあると認めたため)として伝える必要があります。

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