2026年12月に施行予定の「こども性暴力防止法(日本版DBS)」。 ニュースなどでは「犯歴チェック」ばかりが注目されがちですが、法律の条文やガイドラインを読み解くと、事業者には「犯歴チェックよりも、こちらの対応の方が日常業務としては負担が大きいのではないか?」と思えるほど、重厚な「安全確保措置」が義務付けられています。
1. 安全確保措置とは?
こども性暴力防止法は、単に「過去に犯罪をした人を排除する」だけの法律ではありません。「今いる職員による性加害」や「DBSをすり抜けた初犯者による加害」を防ぐための、日常的な安全管理体制の構築を求めています。
これらを総称して「安全確保措置」と呼び、大きく以下の3つのフェーズに分けて対策を講じる必要があります。
2. 【未然防止】日頃から「加害させない」環境を作る
DBS確認をクリアした職員であっても、将来的に加害を行わない保証はありません。事業者は「性暴力を許さない、起こさせない環境」を作らなければなりません。
① 義務化される「研修」の実施
法律により、対象業務従事者への研修受講が義務となります。
② 物理的な環境整備(死角をなくす)
「1対1」の密室状況を作らないことが鉄則です。
3. 【早期把握・事案対処】こどものSOSを逃さない
大人の側から積極的に兆候を拾いに行き、万が一の際には迅速に動く仕組みです。
4. 違反時のペナルティ~「公表」と「刑事罰」~
この法律は、対応を怠った事業者に対し「社会的な制裁」と「刑事罰」の両面から厳しい責任を課しています。
① 行政処分と「公表制度」
義務に違反した場合、国から是正命令が出されます。これが改善されるまで新たなDBS確認書の交付がストップし、事実上、新規採用ができなくなるという業務上の大打撃を受けます。
最大のリスクは「公表」と「認定の取消し」です。 義務対象事業者が犯歴確認の義務を怠った場合は、「国による違反事実の公表」が行われます。また、認定対象事業者の場合は、義務違反や是正命令に従わないことで「認定の取消し(およびその事実の公表)」が行われます。法人名・施設名が公にさらされることによる保護者からの信頼失墜は計り知れません。
② 刑事罰~担当者個人も対象~
犯歴情報は「機微情報」であるため、故意による取り扱いや悪用は、刑事罰につながります。
まとめ:コンプライアンスが経営を守る
こども性暴力防止法への対応は、採用時の「入り口」チェックだけでなく、現場の業務フロー全体を変えていく必要があります。
経営者はリスクの重さを理解して体制整備に投資し、実務担当者は情報の取り扱いに細心の注意を払わなければなりません。コンプライアンスの徹底こそが、こどもたちを守り、同時に組織を守ることにつながるのです。
- Q犯歴チェック(DBS)をしていれば、研修などは省略できますか?
- A
いいえ、できません。「安全確保措置」として従事者への研修や環境整備は義務付けられており、これらを怠ると是正命令や公表の対象となる可能性があります。
- Q犯歴情報を不注意で漏らしてしまった場合でも罰せられますか?
- A
いいえ、刑事罰(1年以下の拘禁刑や罰金等)の対象となるのは、情報を『故意に』漏らしたり、不正な目的で提供した場合です。しかし、不注意であっても情報漏えいが発生すれば、国への報告義務が生じるほか、行政指導や認定取消し、さらには民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。
- Q是正命令を受けると、どのような影響がありますか?
- A
改善が認められるまで、国からの「犯罪事実確認書」の交付が停止されます。これにより、新規スタッフの採用手続きが実質的に停止するという重大な影響が生じます。さらに、認定対象事業者が是正命令に従わない場合は、「認定の取消し(およびその公表)」という致命的なペナルティが科されます(※義務対象事業者の場合は、犯歴確認義務そのものを怠った場合に公表の対象となります)。



