こども性暴力防止法(日本版DBS)認定制度のメリット・デメリットと該当性

事業者の皆様へ

今年12月の施行に向けて準備が本格化しているこども性暴力防止法(日本版DBS)。 今回は、多くの事業主様が最も頭を悩ませるポイント、「認定制度(任意制度)のメリットとデメリット」について、そして対象業務を決める最重要指標「支配性」について詳しく解説します。

1. 「認定制度」の仕組みをおさらい

こども性暴力防止法(日本版DBS)では、事業者を大きく2つのグループに分けています。

  • 義務対象事業者: 学校、公立幼稚園、認可保育所など。法律で確認が強制されます。
  • 認定対象事業者(任意): 学習塾、スポーツクラブ、認可外保育施設など。

認定対象事業者は、国(こども家庭庁)に申請を行い、「学校と同等の安全確保措置を講じている」と認められることで、初めて日本版DBSのシステム(こまもろうシステム)を利用できるようになります。

2. 認定を受ける「4つのメリット」

任意であるにもかかわらず、なぜ認定を受ける必要があるのでしょうか。

  • 「こまもろうマーク」による信頼の可視化 認定ロゴマークを掲示でき、保護者に対し「先生の犯罪歴をチェックしている」という強力な安心材料(ブランド)を提供できます。
  • 性犯罪歴の確認が可能になる 法務省の正確な犯歴データに基づいた確認ができるようになります(認定を受けなければ照会できません)。
  • 採用時のミスマッチとリスク回避 募集要項に明記することで不適切な人物の応募を未然に防ぐ「抑止効果」と、採用前のブロックが期待できます。
  • 社会的責任(ガバナンス)の証明 社内の安全管理体制(研修や窓口)を見直す契機となり、組織全体のコンプライアンスが向上します。

3. 認定に伴う「3つのデメリット・負担」

メリットの裏側には、事業者側が背負わなければならない「重み」があります。

 ① 事務負担とコストの増加 認定は一度受ければ終わりではありません。

  • 就業規則や各種規定の整備: 認定の要件を整えるだけでも膨大な事務作業が必要となります。(ひな型のコピペではなく、専門家への相談も必須です)
  • 従業員への研修: 認定取得前と認定取得後も定期的な従業員への研修が必要となります。
  • 安全確保措置の実施: 初犯対策として最も重要な「安全確保措置」の日常的な実施が必要になります。
  • 5年ごとの再確認義務: 既存職員も認定取得時だけではなく定期的に確認が必要です。
  • 定期報告: 犯罪事実確認の実施状況や情報管理の状況を、毎年国へ報告する義務が生じます。
  • GビズIDの取得: システム利用のため、法人としてのデジタル認証準備も必要です。

厳格な情報管理の責任 「犯罪歴があるかないか」という情報は、究極の個人プライバシーです。 もし情報を漏洩させたり、不適切に扱ったりした場合には、「是正命令」や「認定の取り消し」だけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。事業者には、高度なセキュリティ体制と責任者の設置が求められます。

違反時の「事業者名公表」リスク 認定事業者が犯罪事実確認義務を怠ったり、命令に違反したりした場合、国によって認定が取り消され、事業者名がインターネット上で公表されます。「安全を売りにしていたのに裏切られた」というレピュテーション(評判)リスクは、認定を受けていない事業者よりも大きくなる可能性があります。

4. 自社の該当性をどう判断すべきか?

認定を取得すべきか、またスタッフが確認対象になるかの境界線は、以下の3つの観点で見極めましょう。

  • 支配性: 従事者がこどもに対して指導・教育を行う立場か。
  • 継続性: こどもと接する機会が定期的・反復的か。
  • 閉鎖性: 1対1や、第三者の目が届かない状況で接する機会があるか。

この「3要件」を満たす業務が中心であるならば、保護者からのニーズは非常に高いものと考えられます。 また、認定取得を考える際は、前述の「デメリット(事務負担やリスク)」を踏まえた上での判断を強く推奨します。

【職種別】支配性の「あり・なし」判定例

  • 事務職員: 児童の面倒を見たり、日常的に会話したりする場合は「あり」。書類整理のみなら「なし」。
  • 調理員: 配膳時に会話や食育指導を行う場合は「あり」。厨房内のみなら「なし」。
  • 清掃員: 児童がいる時間帯に会話しながら清掃する場合は「あり」。夜間・早朝のみなら「なし」。
  • 医師: 個別診察や健康相談を行う場合は「あり」。集団健診のみで他職員が同席なら「なし」。

5. 支配性などを判断する際の「落とし穴」

  • 「ボランティア」や「実習生」でも対象になる: 雇用形態は関係ありません。業務内容で判断されます。
  • 「1日だけのゲスト」は対象外: 人間関係が反復継続しない(継続性がない)ため、原則として確認対象外です。

まとめ:認定は「安全のパスポート」

認定制度は、単に従業員の過去を暴くためのものではありません。「こどもの安全を第一に考える事業者である」という姿勢を公的に証明するライセンスです。事務的な負担やリスクは存在しますが、それを上回る「信頼」という資産を得られるのがこの制度の意義です。

Q
認定を受けると、必ず全スタッフの犯歴を確認しなければなりませんか?
A

いいえ。確認の対象となるのは「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件を満たす業務に従事するスタッフです。児童と接触しない事務専任のスタッフなどは対象外となります。

Q
認定を受けた後、更新手続きはありますか?
A

認定そのものに期限はありませんが、従事者に対する犯罪事実確認は「5年ごと」の定期的な実施が義務付けられています。また、毎年の定期報告が必要です。

Q
1対1のレッスンを行う個人事業主ですが、認定を受けられますか?
A

民間教育事業として認定を受けるには、原則として「従事者が3人以上」という要件があります。そのため、1名のみの個人事業主は現在の制度設計では認定を受けられない可能性が高いです。

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